いんちょき通信

boost::threadでマルチスレッドってやつを試してみる

マルチスレッドということを自分がどの程度理解できているかは怪しいものだが、将来的に並列処理というものは避けて通れない予感がする。というわけで、とりあえずスレッドってものに触れてみようと例によってBoost C++ LibrariesのThreadを使ってみた。

ドキュメントによるとCallableなものを引数にしてインスタンスを生成しろとあるので、関数でも渡しておけばいいと理解した。スレッドの終了を待つにはjoin()メンバを呼び出せばいいともある。というわけで、次のようなコードを書いてみた。

1. #include <iostream>
2. #include <fstream>
3. #include <cstdlib>
4. #include <ctime>
5. #include <boost/thread.hpp>
6. using namespace std;
7. using namespace boost;
8. void writeMsg()
9. {
10.   time_t clock;
11.   for (int i = 0; i < 100; i++){
12.     time(&clock);
13.     cout << "writeMsg: " << ctime(&clock);
14.     for(int j = 0; j < 10000; j++){
15.       for(int k = 0; k < 10000; k++){
16.         int a = j * k;
17.       }
18.     }
19.   }
20. }    
21. int main()
22. {
23.   thread thWriteMsg(&writeMsg);
24.   time_t clock;
25.   for (int i = 0; i < 100; i++){
26.     time(&clock);
27.     cout << "MAIN: " << ctime(&clock);
28.     for(int j = 0; j < 10000; j++){
29.       for(int k = 0; k < 10000; k++){
30.         int a = j * k;
31.       }
32.     }
33.   }
34. thWriteMsg.join();
35. return EXIT_SUCCESS;
36. }

 TestThread.cppをダウンロード

要は関数から呼び出しものは「writeMSG: 時間」、メイン関数内に記載したものは「MAIN: 時間」を表示する。この2種類の表示が入り乱れればOKということになる。あまり速いとわかりにくいので、無駄にかけ算をして時間稼ぎをしている。

次のようにビルドしようとしたところで問題が発生した。

g++ -o testThread testThread.cpp

ドキュメントを見る限りでは「Build & Link.....Automatic linking」と書いてあるが、「Undefined Symbols: "boost::detail::thread_data_base::~thread_data_base()"〜」などとでてリンクに失敗しているようだ。どうもthread関連のシンボルが見つからないようだ。しょうがないので、明示的に「libboost_thread」を次のようにリンクするとうまくいった。

g++ -o testThread testThread.cpp -lboost_thread

Mac以外のほかのOSでは試していないので何ともいえないが、Mac OS Xでは「-lboost_thread」は必須らしい。

できあがったものを実行してみると、

writeMsg: Sat Feb  5 21:52:24 2011

MAIN: Sat Feb  5 21:52:24 2011

writeMsg: Sat Feb  5 21:52:24 2011

MAIN: Sat Feb  5 21:52:25 2011

writeMsg: Sat Feb  5 21:52:25 2011

MAIN: Sat Feb  5 21:52:25 2011

writeMsg: Sat Feb  5 21:52:25 2011

MAIN: Sat Feb  5 21:52:25 2011

writeMsg: Sat Feb  5 21:52:25 2011

MAIN: Sat Feb  5 21:52:26 2011

writeMsg: Sat Feb  5 21:52:26 2011

writeMsg: Sat Feb  5 21:52:26 2011

MAIN: Sat Feb  5 21:52:26 2011

writeMsg: Sat Feb  5 21:52:27 2011

MAIN: Sat Feb  5 21:52:27 2011

という具合に表示された。

ドキュメントをざっと眺めると、引数付きの関数を渡すときのコンストラクタやスレッドをグループ化するthread_groupなるものもあったので、次はそれを試してみようと思う。

設定ファイル読み込みクラス (C++)

(English Version is Here)

前回と前々回に引き続き、Boost C++ Librariesを使ってみる。

今回はせっかくなので、使えそうなものを作ろうということで「設定ファイル読み込みクラス」を作成知ることにした。仕様は以下の通り。

• 設定ファイルのパスを引数としてインスタンス化
• 「#」の後ろはコメント
• 設定ファイル内では「変数名=値」と記述
• 「値」を「,」で区切って記載した場合は配列として読み込む
• 「param(変数名)」または「param(変数名, 添え字)」メソッドを使用して値にアクセスする
• 「parse()」メソッドを実行することで、設定ファイルを読み込む
• とりあえず構文エラーは気にしない

ソースはこんな感じ( Configure.tar.gzをダウンロード)。それぞれのファイルは以下のようになっている。

• Configure.hpp : 設定ファイルクラスのヘッダー
• Configure.cpp : 設定ファイルクラスのソース
• def.hpp : 長い名前のtypedefなどをまとめて記載
• testConfigure.cpp : 実際に使ってみたサンプル

名前空間を定義しているが、これは個人的に後で使う予定との兼ね合いなので気にしないでほしい。

コンパイルは次のよう実行する。
# g++ -o testConf testConfigure.cpp Configure.cpp -lboost_system -lboost_filesystem
-lboost_filesystemはなくてもいけるかもしれない。

サンプルの設定ファイル(conffile.txt)は次のものを使っている。

1. #aaa = aaa
2. OPTION=0
3. AUTHOR=INCHOKI #Author
4. PATH=/aaa/aaa/bbb | aaabbbccc
5. DIRPATH=aaa/bbb , 12345
6. PARAMETER = xyz && aaaaaa
7. VERSION = 0.1 # version
8. TEST =     AAA

サンプルを実行すると、次のような結果となる。

1. MacBook:work inchoki$ ./testConf 
2. ./conffile.txt
3. 0
4. INCHOKI
5. /aaa/aaa/bbb | aaabbbccc
6. aaa/bbb
7. xyz && aaaaaa
8. 0.1 
9. AAA 

ソースを貼り付けると長くなるので、parse()実行時の処理の概要だけ書くと、

1. セパレータや正規表現を定義
2. 設定ファイルをオープン
3. 一行ずつ読み込む
4. 先頭がコメント文字の時は無視して次の行
5. 「=」の両側のスペースを削除する
6. 「#」で区切って、前の方だけを取り出す
7. 「=」で区切る
8. 値に文字列内の「,」があるか確認する
9. 「,」がある場合はその両側のスペースを削除してから、「,」で区切る
10. map変数に変数名をキーとして値を格納する。配列型とそれ以外は内部的には別変数に格納する。

それなりに動いたが、次に改良するとしたら

• やはり構文エラーを気にしないのはどうかと思う
• Parserクラスを作って、設定ファイルのフォーマットによってパーサを切り替えたい
• コピーコンストラクタは保護しているのに代入演算子は気にしてないとか、中途半端
• どうせなら設定管理クラスとしてシングルトンパターンを適用するとかしたほうがいいかも
• 名前がいけてない
• ドキュメントも作りましょう

といったところかと思っている。

Boostの使い方を思い出すためのメモ Tokenizer その2

前の記事に引き続き、Boost C++ Librariesの"tokenizer"を使ってみた。

今度は、"VAR=VALUE"の形式で書かれたファイルを"="で分割し、"VAR"をキーとしたmapに"VALUE"を値として放り込むということにした。ソースは次のようになっている。

1. include <iostream>
2. #include <string>
3. #include <fstream>
4. #include <map>
6. #include <cstdlib>
8. #include <boost/tokenizer.hpp>
10. using namespace std;
11. using namespace boost;
13. int main(){
14.   typedef char_separator<char> c_separator;
15.   typedef tokenizer<c_separator> tokenizer;
17.   string line;
18.   map<string, string> param;
20.   c_separator eq_sep("=", "", keep_empty_tokens);
21.   ifstream inparam("./eqparam");
22.   while ( getline(inparam, line) ){
23.     tokenizer eq_tokens(line, eq_sep);
24.     tokenizer::iterator et_iter = eq_tokens.begin();
25.       param[*et_iter++]=*et_iter;
26.   }
27.   inparam.close();
29.   for(map<string, string>::iterator iter = param.begin();
30.         iter != param.end();
31.         ++iter){
32.     cout << "param[" << (*iter).first << "] : " << (*iter).second << endl;
33.   }
35.   return EXIT_SUCCESS;
36. }

Tknzer2.cppをダウンロード

入力に使用した"eqparam"は次の通り

1. AUTHOR=INCHOKI
2. OPTION=
3. TMPDIR=/tmp/tknzer
4. VERSION=1.0
5. DATE=2011/1/31
6. KEYWORD=boost tokenizer c++

基本的にtokenizerの使い方はCSVを処理したときと同じで、区切り文字が","から"="になっている違いがあるくらい。実行結果は次のようになる。

1. MacBook:work inchoki$ ./tknzer2
2. param[AUTHOR] : INCHOKI
3. param[DATE] : 2011/1/31
4. param[KEYWORD] : boost tokenizer c++
5. param[OPTION] : 
6. param[TMPDIR] : /tmp/tknzer
7. param[VERSION] : 1.0

ちゃんと空パラメータの"OPTION"もうまいこと処理しているようだ。

Boostの使い方を思い出すためのメモ Tokenizer

(English Version is Here)

久しぶりに、手持ちのMacにBoost C++ Librariesを導入したので、思い出しがてら使ってみた。

とりあえず、Tokenizerを使ってcsvファイルを処理してみる。入力ファイルとして、次のような内容の"tokendata.csv"というファイルを用意した。

1. 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10
2. 1,,3,4,5,6,7,8,9,10
3. boost,tokenizer,boost tokenizer,"boost tokenizer"
4. ひらがな,カタカナ,漢字

このファイルを行単位で読み込み標準出力に表示し、続けてカンマで分割したものを表示していく。ソースは以下の通り。

1. #include <iostream>
2. #include <string>
3. #include <fstream>
5. #include <cstdlib>
7. #include <boost/tokenizer.hpp>
9. using namespace std;
10. using namespace boost;
12. int main(){
13.   typedef char_separator<char> c_separator;
14.   typedef tokenizer<c_separator> tokenizer;
16.   string line;
18.   c_separator csv_sep(",", "", keep_empty_tokens);
20.   ifstream incsv("./tokendata.csv");
21.   while ( getline(incsv, line) ){
22.     cout << line << endl; 
23.     cout << "-----TOKENS-----" << endl;
24.     tokenizer csv_tokens(line, csv_sep);
25.     for (tokenizer::iterator ct_iter = csv_tokens.begin();
26.            ct_iter != csv_tokens.end();
27.            ++ct_iter){
28.       cout << "\t" << * ct_iter << endl;
29.     }
30.     cout << "-----TOKENS-----" << endl << endl;
31.   }
32.   incsv.close();
34.   return EXIT_SUCCESS;
35. }

Tknzer.cppをダウンロード

7行目：Boost Tokenizerのヘッダをインクルードする。

10行目：boost名前空間を使用する

13,14行目：名前が長いのでtypedefする。13行目が区切り文字、14行目がtokenizer本体

18行目：区切り文字を設定する。第一引数が区切り文字、第二引数はトークンとして残す区切り文字、第三引数は空トークンの扱い。第三引数のデフォルトは"drop_empty_token"となっていて、空の場合は捨てられる。今回は"keep_empty_token"を指定して、空トークンも空として認識するようにする。つまり、カンマが連続した場合は空の値として扱う。

24行目：tokenizerを定義して行をトークン分割する。

25〜29行目：イテレータを使って分割したトークンを表示する。

実行結果は

1. MacBook:work inchoki$ ./tknzer
2.  1,2,3,4,5,6,7,8,9,10
3. -----TOKENS-----
4.  1
5.  2
6.  3
7.  4
8.  5
9.  6
10.  7
11.  8
12.  9
13.  10
14. -----TOKENS-----
15. 1,,3,4,5,6,7,8,9,10
16. -----TOKENS-----
17.  1
19.  3
20.  4
21.  5
22.  6
23.  7
24.  8
25.  9
26.  10
27. -----TOKENS-----
28. boost,tokenizer,boost tokenizer,"boost tokenizer"
29. -----TOKENS-----
30.  boost
31.  tokenizer
32.  boost tokenizer
33.  "boost tokenizer"
34. -----TOKENS-----
35. ひらがな,カタカナ,漢字
36. -----TOKENS-----
37.  ひらがな
38.  カタカナ
39.  漢字
40. -----TOKENS-----

いい感じでできているみたいだ。